VEGFは、vascular endothelial growth factor(血管内皮増殖因子)の頭文字を取ったもので、糖タンパクの一種です。
この糖タンパクは血管の伸長に関与していて、体中のさまざまな生理的機能や、病気の発生と悪化に関与しています。
抗VEGF治療とは、VEGFの作用を阻害する薬剤(抗VEGF薬)を用いて、病気を抑制、改善しようというものです。
抗VEGF治療が有効な眼疾患には滲出型加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫、近視性脈絡膜新生血管のようなものがあります。
これらの疾患はいずれも最近まで良い治療法のない難病でした。抗VEGF治療は現在、これらの疾患に対して最も有効です。
しかし抗VEGF治療にも大きな限界があり、今後さらに研究をすすめる必要があります。
現在、3種の抗VEGF薬(アイリーア、ルセンティス、マクジェン)が眼科用剤として認可されています。
それ以外にベバシズマブ(アバスチン®)という製剤が適応外使用として眼疾患に用いられることがあります。
ベバシズマブを用いる場合には、各施設の倫理委員会の承認を得てから患者とその家族へ説明を行い、同意を得たうえで使用します。
抗VEGF薬は1回の投与で疾患を完治できるものではありません。1ヵ月~数ヵ月おきに繰り返して投与を行う必要があります。
投与のパターンは、疾患や、施設・担当医の考え方によって若干、異なります。主な投与方法は以下のとおりです。
抗VEGF薬は眼内へ注射します。具体的には、点眼による局所麻酔と消毒の後、角膜輪部(黒目の縁)から約3.5mm離れた結膜(白目)の部分から薬液を眼内へ注射します。
痛みはほとんどなく、通常、入院の必要はありません。なお注射後の感染を予防するため、注射の数日前から数日後にかけて抗菌薬の点眼を行うことが多いです。
抗VEGF治療の全身的な副作用には、心筋梗塞、脳梗塞などがあります。
心筋梗塞と脳梗塞は、その既往があるとリスクは高くなり、6ヵ月以内にイベントのあった患者さんには抗VEGF治療は控える場合があります。
また胎児への影響は明らかでないので、治療中の妊娠や授乳は避けたほうが良いです。
抗VEGF治療の眼合併症には眼内炎(感染性・非感染性)、結膜下出血、一過性の眼圧上昇、白内障、網膜剥離、眼内の出血(硝子体出血)などがあります。
この中で感染性眼内炎は、頻度は低いものの失明のリスクがあります。
網膜剥離や眼内出血は、抗VEGF治療の合併症というよりも、原疾患(糖尿病や加齢黄斑変性など)によるものがほとんどです。